2011年11月9日水曜日

■「選手がプロ入りした段階で育成は終了か?」


以下スポナビの小澤一郎氏のコラム。
間違いなく、大学サッカーの役割大きくなっているし、
コレから益々大きくなるだろう。


■今こそ目を向けたい「18歳以降の仕上げの育成」 日本サッカー界の課題解決に向けた3つの提案
ハーフナー・マイク(甲府)が10月のワールドカップ予選・タジキスタン戦で活躍した際、多くのメディアが順風満帆ではない選手キャリア、特に福岡、鳥栖、甲府と3度のJ2移籍を経験した苦労話にスポットライトを当てた。確かに横浜FMユース出身のエリート選手として育ってきたハーフナーが、1度ならず2度も期限付き移籍をして、「ここで成功しなかったらサッカーをやめようと思った」というほどのドン底から這い上がってきたサクセスストーリーは人々の琴線に触れる。だが、その一方で、わたしは「そろそろサッカー界だけでもお涙ちょうだい物語からの脱却を図るべきでは?」と思う。

現在、日本サッカー界が抱える最大の課題は、18歳以降の仕上げの育成ではないだろうか。日本においては高校卒業後の18歳、あるいは大学卒業後の22歳で、選手がプロ入りした段階で育成が終了したような空気がまん延している。プロ入りした後は選手次第。プロとして大成しなければ「本人の実力、努力が足りなかった」と認識され、その感覚はJリーグが発足して以降ほとんど変化がない。

しかし、長年この部分に疑問を感じ、「18歳で育成が終わるわけではない」と訴え続けてきたのが大学サッカー界の指導者たち。特に、これまで永井謙佑(名古屋)や田代有三(鹿島)ら40人以上のJリーガーを輩出している福岡大学の乾眞寛監督は、Jリーグ開幕前年の1992年にバイエル・ミュンヘンのセカンドチームで1年間指導者研修を経験しており、ユース上がりのタレントがセカンドチームで揉まれ、実戦経験を積みながらトップチームで通用する選手に磨かれていく仕上げの育成を目の当たりにしている。その乾監督は帰国後のJリーグバブルの中で起きていた若手選手の大量解雇についてこう振り返る。

「当時のあるJクラブには、選手が60人ぐらいいて、高校生はみんなそのままJに上がりました。しかし、その後起きたことは20歳そこそこの選手の大量解雇です。何ら教育されず、プロとは何かを知らずに飛び込んで、切り捨てられる選手たち。でも、その層は日本のサッカー界でいくと明らかに『タレント』と呼ぶべきなのです。そうであったはずなんです。しかし、彼らを使わず、ゴミ箱に捨てる流れがあった。何とかしないといけないと思いました」

■J1の新人54名のうち24名がリーグ戦未出場

2009年にサテライトリーグが廃止されたことで、現在はどのJクラブもサテライトチームを持っていない。財政的に厳しいクラブも多くなっているため、選手の保有人数はJ1平均28.2人に絞られている。さすがにかつてのような露骨な「若手選手の使いつぶし」現象は見られない。とはいえ、今季J1クラブに加入した新人選手54名のうち、第31節を終わった時点で24名の選手がリーグ戦未出場という現実がある。

磐田の大卒3選手(山田大記、小林裕紀、金園英学)や、横浜FMの小野裕二(昨季からトップチーム所属)のようにルーキーイヤーでいきなり25試合以上の出場を果たしている主力選手もいるが、これはあくまでごく一部。さすがに22歳で「即戦力」として加入する大卒選手は、22名のうち16名がすでにリーグ戦出場を果たしているが、高卒新人のデビュー率は50%(9人/18人中)、ユース上がりの新人のデビュー率に至っては35.7%(5人/14人中)と低く、18歳でプロ入りした選手に公式戦に出場する環境がない問題は依然として残っている。

スペインをはじめとする世界のサッカー、育成事情に精通している日本サッカー協会技術委員長の原博実氏は、6月10日のロンドン五輪アジア2次予選(対クウェート)のメンバー発表の席でこの問題についてこう言及している。

「課題は同じで、やはり試合をやれる環境、そこをもっと与えてあげるというか。例えば、クラブでも増えてきていますけど、J1で出られなければJ2に行って試合を重ねることで伸びると。選手にとっては練習ではなくて公式戦に出て、リーグ戦を重ねることで伸びる。それは関塚監督も僕も(考えが)一緒です。そういう環境を、どうやって日本の中で作るか。高校時代はJリーグに入った選手の方が上でも、大学に行って伸びる選手もいる。でも大学は大学で、だんだん上級生になるとなぜか伸びが止まってしまう。そのへんをどうしていくかは、今後の課題ではあると思います」


【所要時間:15分】本日、会社辞めた後輩と東銀座で飲む。