2009年6月8日月曜日

■「早稲田力。」 Number



発売と同時に購入してはいたものの、何となく、読むのに抵抗感があって放置していた。読んでみると、結構面白い。ライバル大学ながら非常に勉強になる。特に『理を越えた闘将たち。』は必見。ア式蹴球部の工藤孝一監督について書かれています。工藤氏のことは、このNumberで初めて知った。堀江忠男監督については、暁星林さんから何度か話は聞いたことあって知っていたのですが、工藤氏は全く知らない。(雑誌の中で岡田監督も堀江氏については触れてます。) 工藤氏は、選手に石を投げつけならがトータルフットボールを説いたサッカーに対する知的アプローチと理屈を超越した理屈、道理には収まらぬ道理、その場所にこそ勝負の核心はあることを知っていた人物。早稲田スポーツの系譜には「理外の理」がキーワードとして存在。ラグビーの大西鐡之祐監督も、100の理屈を教え込み、101番目に「理屈じゃねぇ」と言い放つ。まさに、全ての競技に通じる真理だと思う。
 
提灯記事っぽいものだけではなく、早稲田ラグビー部の「ジェントルマンシップ」の欠落に対して、OBが危惧する現状なども書かれており非常に興味深かった。「どんなときでも勝利を目指さなければいけない」のであって「勝つためなら何をしてもよい」というロジックは確かに危険だなと思う。勝負に対する貪欲さ、人間としての謙虚さ(単に腰が低いのではなく、学び続ける姿勢)、スポーツマンシップ、併せ持つ必要がある。

少々残念だったのは、冒頭に「近年、スポーツ推薦制度をいかした強化が功を奏し、各部が覇権の地位固めが着々と進む一方で、OBや関係者や世間からの賛否両論は喧しい。文武両道。古今東西、学生の理想像として謳われ。使い古された言葉であるが、早稲田の現状を表すには、はたして相応しいものと言い得るのか否か-」とぶち上げているものの、その回答に当たる内容が無かったような気がする。内部進学者と推薦入学者との関係や、努力の代表者と才能の代表者の融合とか、リアルな現場のそういったドロドロしたコラムも1本くらい欲しかったなと思った。とはいえ、商業主義なのかもしれないが、大学のブランドイメージを上げるために勝利至上主義に走ることは決して否定できないし、個人的には早稲田には突き抜けるくらい強くあって欲しい。その、圧倒的に強い早稲田を倒すことが、最高なんだから。




【所要時間:35分】