2009年12月26日土曜日

■岡田武史氏語る、日本代表監督の仕事とは

以下、岡田監督の講演。(2009/12/11)
暁星林監督とホント似たようなこと言ってるなぁ。面白いです。

■岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは ~Business Media誠

以下、印象的な部分を一部抜粋させて頂く。

「Enjoy」とはどういうことか
岡田 もう1つのフィロソフィーについては、マスコミさんがいる前では話したことがないのですが、最近はこの話を選手にもしなくなった。というより、する必要がなくなった。だから今日はちょっと簡単にお話ししようと思います。
 1つは「Enjoy」と言っています。「楽しむ」ということなのですが、英語で言っているのは日本語で「楽しむ」と言っても何かピンとこないからです。
 日本代表選手になるくらいの奴は子どものころ、「俺にボールよこせ」「俺にボールよこせ」とお山の大将です。プロだろうが日本代表だろうがW杯だろうが、そのサッカーを始めた時の喜びやボールを触る楽しみを絶対忘れてはいけないということです。
 大人になってくると、「今、ちょっとボールいらない」とだんだんなってきます。なぜか? 「プレッシャーが強いし、ミスをしそうだ」ということで守りに入っているからです。そうしてうまくなった選手を今まで見たことありません。相手を恐れておどおどプレーしたり、ミスを恐れて腰の引けたプレーをしたりする姿は絶対見たくない。「みんながピッチの上で目を輝かせてプレーする姿を見たい」ということです。
 Enjoyの究極はどういうことかというと、自分の責任でリスクを冒すことなんです。日本の選手は「ミスしてもいいから」と言ったら、リスクを冒してチャレンジをするんです。ところが「ミスするな」と言ったら、途端にミスしないようにリスクを負わなくなるんです。
 例えばギャンブルで、大金持ちのお金を分けてもらって「それで遊んでいいよ」と言われて大もうけしても失っても、面白くもくそもないでしょ。自分のなけなしの金を賭けるから、増えたら「やったー」と思うし、なくなった時に「うわ、やばい」と思う。要するに「ミスするなよ」と言われている中でいかにリスクを自分の責任で負えるか、それが本当のスポーツのEnjoyなんです。

 本当にEnjoyするためには何をしないといけないかというと、「頭で考えながらプレーするな」ということです。どういうことかというと、脳は(大脳)新皮質と(大脳)旧皮質からできていて、脊髄からつながっているところが旧皮質で、簡単に言うとどんな動物でも持っている本能のようなところです。そして、人間と一部の動物が発達しているのがその周りの新皮質で、ここは物事を論理的に考えたり、言葉を喋ったりするところです。
 ところが、コンピュータの演算速度で例えると、新皮質は演算速度が非常に遅い。例えば、新皮質で考えながら自転車には乗れない。右足のひざをこの辺まで曲げて、このくらいまでいったら体重を左にかけて……なんて考えながら乗れないですよね。キャッチボールもできない。ひじを伸ばして、ボールが来たから指を開いて、次に閉じて……と考えていたら間に合わない。旧皮質で感覚的にやっていかないといけない。スポーツというのは旧皮質でやらないといけないんです。
 ところが日本人はどうも教えられ慣れているので、ボールが来たから胸でトラップして……と新皮質で考えながらやってしまう。だから、向こうでは全然大したことないようなブラジル人がバンバン点を取る。あいつら何も考えていない。来たボールをボンと蹴るだけ。ある意味そういうことも大切。練習では考えてやらないといけない。でも、「試合ではそれを頭を使ってやるな。自分が感じたことを信じて、勇気を持ってプレーしなさい」、それがEnjoyです。

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村の祭り酒という話を、選手によくします。収穫を祈念して、夏祭りをする村があった。祭りでは、お酒が入った大きなたるを、みんなでパーンと割って始める風習があった。ところがある年、貧乏でお酒が買えなくて、みんな集まって「どうしよう、これじゃ祭り開けねえな」と悩んでいた。するとある人が、「みんなが家からちょっとずつお酒を持ってきて、たるに入れたらどうだ?」と提案した。「それはいいアイデアだ」ということで、みんなが持ち寄ってたるがいっぱいになった。「これで夏祭りを迎えられる。良かった」ということで当日にパーンとみんなで割って「乾杯」と言って飲んだら、水だったという話です。みんな、「俺1人ぐらい水を入れても分かんないだろう」と思っていたんです。
 チームでもそういうことはあります。9月5日のオランダ戦(3対0でオランダ勝利)で1点目を入れられた後、みんなそうなりました。「チームはちょっと負けてるけど、俺は一生懸命やってるからまあいいや」ということで、だんだんみんなが引いてくるのが分かるんです。その次の9月9日のガーナ戦(4対3で日本勝利)はそれをかなり僕は言いましたから、2点差がついても彼らは向かっていきました。そういう意味で、このour teamというのは「自分のチームだということを忘れんな」ということです。


【所要時間:10分】遠藤さんThanks!